「お洒落な人より、洒落た人になれ」と男たちへの遺言を結んだ石津謙介先生は、その言葉の2年後、平成17 年5 月24 日、氏の提唱した「人生四毛作」の収穫をすべて終えました。けれども、その種子は全国に蒔かれ、それぞれの土地に根を張り、たわわな稲穂となっております。我がボタンダウンクラブ名誉会長でもある石津謙介先生は、生前より葬式無用論を唱えていました。そこで有志が集まり氏の遺志を尊重して告別式は行わず、湿っぽいムードになり勝ちなお別れ会や偲ぶ会も避けて、石津謙介先生に写真と映像で再会する会を「お帰りなさい石津謙介さん」と題して開催いたしました。

石津先生の誕生日でもある10 月20 日をスタートに、東京では3日間、石津先生ゆかりの青山は草月会館で、大阪では10 月25 日に繊維輸出会館で、大勢の人を迎えてしめやかならぬ、むしろ賑やかに行われました。
東京会場は青山通りの赤坂よりにある草月会館の1階にある草月プラザ。この広い空間はアーティストのイサム野口氏による石だけで構成された力強いイメージの広場で、3段構成になっている。最上段には石津謙介先生がVAN の社長室で使っていたピアノを思わせる黒い大きなデスクが当時の姿のままで置かれ、且つてここを訪れたことのある人には懐かしい場面が再現されていた。また、その隣には石津先生の四谷の自宅の居間が再現され、VAN 当時に設立したイタリア家具メーカー、アルフレックスの第1号作品となったM7と呼ばれるソファが置かれていた。
VAN 社長当時、石津先生は「ファッションはライフスタイル全体に及ぶ」と説き、それをビジネスにも反映。服飾以外の第1号として元VAN 社員の保科正氏に協力して家具メーカー、アルフレックス社を設立。石津先生の身の周りにはアルフレックスのモダンな家具が多数見られた。
東京・青山は石津謙介先生が40 年にわたり仕事の本拠をおきこよなく愛したところで、この青山を中心にさまざまな分野の人たちとの交流の環がひろがった。この3日間氏と深く関わった人たちが多数会場を訪れ、35 点に及ぶ写真の1点1点に見入っていた。また、会場の4カ所におかれた画像モニターでは氏が出演した100 以上ものテレビ番組の中から抜粋された映像が映し出され、氏の多彩な活躍ぶりがうかがわれた。

会場には生前の石津謙介先生の交際の広さを窺わせる多彩な顔ぶれがそろった。
石津先生とは40年来の友人である日本ファッション界の重鎮、中村乃武男氏は初日に訪れ、且つてよく謙介先生を訪ねて談笑したVAN 社長室のデスクの前で長男、石津祥介氏と思い出を語り合っていた。
BDC 応援団も駆けつけた。

3 年前のボタンダウンクラブ発足以来、応援団となってクラブ発展に協力してくれた各界のお歴々も多数顔をみせてくれた。皆さん、石津謙介先生がVAN 時代に社長室で使っていたデスクを懐かしそうに、あるいは興味深そうにながめていた。
「ここにこうやって座ってオレと話してた石津のオヤジを思い出すなぁ」と話すのはミッキー・カーチス氏。 初期のメンクラ時代からのお付き合い、大橋歩さんも懐かしそうにデスクを見やってにっこり。
日本でも有数のVAN グッズコレクターでもある北原照久さんと奥様の旬子さん。 建築家のエドワード鈴木氏とパートナーの高橋百合子さんもVAN 社長室の再現に興味深そう。
石津先生とは40 年以上の付き合いという元カーレーサーの式場壮吉氏。

まだ学生だった頃からVAN に出入りしてはバンドのユニフォームをせしめていたマイク眞木氏と、同じくVAN の宣伝部によく遊びにきていたワイルドワンズの鳥塚しげき氏、ヴィレッジシンガーズの小松久氏。久しぶりに顔を合わせて話に花が咲く。

超多忙なスケジュールの合間を縫って駆けつけてくれたテリー伊藤氏。40年ほど前、みゆき族としてアイビースタイルで銀座を闊歩していたというテリー伊藤氏の石津謙介先生への思い入れは強く、ボタンダウンクラブの強力な応援団を買って出てくれている。

大阪から駆けつけてくれた関西ファッション界の重鎮、原田毅一氏とお嬢さん。大阪での原田氏と石津先生との親交はVAN 創業以前に始まり、60年以上続いたことになる。

帽子デザイナーとして日本の最高峰に君臨する平田暁夫氏夫妻。石津先生とのお付き合いも50 年に及ぶ。 美智子皇后のデザイナーとして知られる植田いつ子さん。
赤坂にアトリエを構える植田さんと青山に本拠をおく石津先生とのお付き合いは長く、特に親しかった。
「お帰りなさい石津謙介さん」のスチール写真は全て写真家、関戸勇氏が撮影したもの。氏と石津先生とのここ10数年に及ぶ友達付き合いからこの素晴らしい写真の数々が生まれた。

大阪会場にも大勢の人がつめかけた。
大阪会場は石津先生が最高顧問をしている日本メンズファッション協会事務所のある繊維輸出会館内ホール。

元VAN の社員たちが大勢懐かしい顔を見せ、さながら同窓会のよう。2次会ではおさまらず、3次会までなだれこんだとか。

MFU (日本メンズファッション協会)の重鎮のお二人。
武本金太郎氏と柴田和男氏。

クラボウ役員であった頃の野田茂氏と石津先生の親交は長い。

大阪でVAN が創業したころから企画の中心人物だった鈴木玲三郎氏と30年ぶりに再会して談笑する石津祥介BDC会長。
ご来場頂きました皆様には、厚くお礼申し上げます。